特集

「苦楽園こんぶ処永楽」さんと考えた

おいしい!楽しい!昆布のある暮らし

海が育んだうまみと健康効果を
手軽に毎日の食卓に取り入れて、
食育上手・お料理上手をめざしましょ。

<前篇>昆布だしのうまみを体感しよう!

昆布の品種によって、だしの風味も違うこと、ご存じですか?知っていそうで知らない、昆布だしの底力を体感しよう!とある日編集部で行われたワークショップの模様をお伝えします。

「日々の料理に使うおだし、どうしていますか?」
天然の「だし」に含まれるうまみは、日々の料理の出来ばえをぐんと上げてくれるうえ、赤ちゃんの食育にもぜひ取り入れたいもの。とはいえ、やっぱりなんだか面倒くさそうで…。そう思いながら、ついインスタントの顆粒だしに手が伸びてしまう人も多いのでは?でも、案ずるより産むが易し!忙しくてもズボラでも続けられる「だし習慣」、あるんです。海の恵み・昆布を使いこなして、日々の食卓を豊かにするコツ、「月とみのり」と一緒に学んでみませんか?

教えてくれる人 藤橋健太郎さん 苦楽園こんぶ処永楽(兵庫県西宮市)ご主人

祖父の代から続く商いを受け継ぎ、保存料・着色料・化学調味料を一切加えない汐昆布をはじめ、安心安全なものづくりに取り組む若手三代目。だしソムリエの資格を持ち、昆布だしのうまみを広く知ってもらうためのワークショップ活動も精力的に行っている。プライベートでは3人の男の子のパパ。
http://www.eiraku-konbu.co.jp/

藤橋健太郎さん

初めての「昆布だしワークショップ」@編集部、はじまりはじまり!

お米が品種や等級によって、炊き上がりの風味もツヤも粘りも違うのはみなさんご存じのとおり。昆布についても同じで、姿形から色、だしの風味にいたるまで、それぞれ産地ごとの個性があるのですが、それを正しく理解している人は、今や料理の専門家でもなかなかいないのが現実です。さらに食生活が変化し、家庭でだしをとる習慣も薄れつつある中で、このままでは昆布本来のうまみを感じ取る味覚が、子どもたちから失われてしまうのでは…という危機感を抱くのが、「苦楽園こんぶ処永楽」の藤橋さん。今日は、そんな「昆布の魅力伝道師」である藤橋さんを編集部にお招きして、「昆布だし体験ワークショップ」を開催することに。ふだん産育食のレシピを考案しているスタッフも興味津々です。


育休中のスタッフもベビー同伴で参加!

天然?養殖?促成?用途に応じて昆布を使い分けよう。

「昆布は、古くから食べられてきた健康効果ばつぐんの食材です。万里の長城を造ったあの秦の始皇帝が、最後に望んだものが“不老長寿の薬”で、家来に命じて探させたところ、行きついたのが日本の昆布だった、とも言われているんです。ところで昆布の生育にはどれぐらい時間がかかると思いますか?」

「うーん、3年ぐらい?」と顔を見合わせるスタッフ。正直言って、あまり考えたことなかったですね。
正解は2年。昆布は1年目でぐんと大きくなり、これは「水昆布」と呼ばれますが、秋になると上の方から徐々に枯れてちぎれてしまうのだそう。そして寒さがピークを過ぎる頃に、再び根元から新しく葉を伸ばして身入りがよくなり、2年目の夏に収穫期を迎えます。実は、市場に出回る昆布には「天然」「養殖」「促成」の3種類があり、お値段と品質もそれぞれに違うそうなのです。うーん、知らなかった。

「天然」「養殖」「促成」の違いを知ろう!

  • まさに自然のまま、岩盤に根付いて2年生育したものを採取する。噛めば噛むほど味が出て、風味豊かなだしもとれるが、収穫量が安定しない。
  • 昆布の遊走子を人工的に採取し、発芽させてから、海中に設営した養殖施設に植え付け、2年かけて育てる。繊維が天然より柔らかめ。
  • 1年目の「水昆布」を収穫するため、早期採苗や栄養塩の与え方などの工夫で、身入りを促進。道南地方で多く生産されている。安価なため徳用カット昆布などによく使われる。早く柔らかく煮たい時などには便利。
藤橋健太郎さん

「天然がよくて養殖や促成がダメ、というわけではなくて、用途に応じて使い分けていただきたいな、と思うんです。この前も知り合いの飲食店から相談を受けまして、鰹節と昆布の両方使ってだしを取っているのに、昆布の味が弱くて料理長が頭を抱えていると。それでどんな昆布を使ってるか見せてもらったら、促成だったんです」

そういえば!と思わず声を上げたスタッフ。
「すごく安い昆布を買ったことがあったんですけど、たくさん入れてもちっともだしが出なくて…。あれもそういういことだったんですね」

「そうなんです、促成はおでんに入れて煮たりする分には柔らかくていいんですけど、だしはどうがんばっても出ないんです。天然なら少し割高にはなりますが、少し使うだけで濃厚なだしが出ますよ。だしをとった後もおいしく食べられますしね」

これだけあります!北海道産昆布。決め手は海流と山のミネラル。

「では次に昆布の種類を見ていきましょう。国内産昆布の9割は北海道産です。昆布のうまみには環境が大きな役割を果たしていますが、おいしい昆布が育つ環境のひとつめの条件は、暖流と寒流がぶつかるところ。そしてふたつめは海の背後に立派な山があって、山からミネラル豊富な川や地下水が流れ込んでいるところなんです」

そういって藤橋さんが見せてくれたのがこの図。北海道の沿岸をぐるりと取り囲むようにさまざまな昆布が生育している中で、とくに質がよいとされている

「真昆布」「利尻昆布」「羅臼昆布」「日高昆布」

といった品種は、海流と山のミネラルが出会うところに分布しているそうなんです。ミネラルや有機物をたっぷり含んだ環境が、おいしい昆布を育てるんですね。

「昆布の姿や風味には、それぞれの海域の個性が色濃く反映されているんですよ」

うーん、そう聞くと、早く味わってみたい!

4大銘柄で昆布だしを飲み比べ!お好みの味はどれ?


昆布の原藻を試食!噛めば噛むほど味が出る~!

「では、ききだし行ってみましょうか。あ、その前に原藻も食べてみてください。味が違うことがわかってもらえると思います」

藤橋さんにすすめられ、原藻をパキパキと割って口に入れてみると…。むむ!本当ですね。ややしょっぱさの強いもの、まろやかなもの、磯の香りの強いもの、あっさりしているもの、比べてみればそれぞれ違うのがわかります。そしてスタッフの前にプラスチックカップに入っただしが並びました。銘柄は伏せられ、シールで色分けがされています。

「真昆布、利尻昆布、羅臼昆布、日高昆布のだし、それに顆粒だしを加えた5 種を飲み比べてみて、ぜひ五感で感じたことを表現してみてください。“これは青空の澄み切った感じだ” とか“これはこんな料理に使ってみたい” とか」


顆粒だしが見抜けなかったらどうしよう…とプレッシャーも感じましたが、やっぱり天然だしとは明らかに別物、ひと口で分かります!


飲み比べてみると、こんなに違うもんなんですねえ!と編集長コツキ。

4種の昆布だしの風味を言葉で表現するのはむずかしいけれど、うん、確かに違います。こうやって並べて飲み比べる機会はまずないので、みんな舌に意識を集中させて真剣そのもの。
「青はお吸い物によさそう」
「黄色は濃くてしっかりした味なので、ちょっと薄口醤油を合わせて、白身魚とだし茶漬けにしたらきっとおいしい!」
「緑はすっきりしてるから煮物がいいかな」
「白は麺にからませるといいかも」
舌の上に感じる味を手掛かりに、脳裡にあれこれ料理を思い浮かべてみます。


真剣なみんなの横で一歳児ちゃんもつられて味見。おいしそうに飲み干してプハーっと笑顔を見せてくれました。

ひとしきり飲み比べをしたあとで、藤橋さんと答え合わせ。ちなみにスタッフの中での一番人気は、黄色マークの「日高」でした。ただしこれは日高の中でも別格の、だしソムリエも注目する特級品だそうで…。

「日高の“井寒台(いかんたい)” という特上浜(とくに高品質な昆布が採れる浜)のもので、昆布屋でも扱っているところがまだ少ない希少銘柄です。本来、日高はややあっさり系でどちらかというと磯の香りが出やすいんですが、井寒台は最後にぐっとしっかりしたコクとうま味が来ますね」

ひとつの銘柄の産地にも、並浜(なみはま)、中浜(ちゅうはま)、上浜(じょうはま)、特上浜(とくじょうはま)という格付けがあるんだそうです。うーん、奥が深い!

4 大銘柄のだしの特徴を知ろう!

  • 甘味があって濃厚まろやか。大阪でおなじみの、甘辛く炊いた揚げののったきつねうどんが代表的なメニュー。
  • 上品ですっきり清澄な風味。京都の料亭でよく使われるように、薄味の煮物や、豆腐、湯葉などによく合う。
  • 塩分をもっとも感じるしっかり系風味。北陸での消費が多く、郷土料理「治部煮」など、濃厚な味付けに適している。
  • ややあっさり系ではじめに磯の香りが来る。関東での消費が多く、郷土料理「どじょう鍋」 などくせのある食材にも適している。ただし水揚げされる浜によってはコク・うまみともに濃い。
藤橋健太郎さん

これなら手間なし簡単! 冷蔵庫に水出し昆布だしを常備しよう!

「次にだしのとり方なんですが、煮出し法と水出し法があります。昆布というのはうまみを引き出すのに時間をかけたい素材なので、煮出す場合もなるべく30分以上、できたら一晩程度は水に浸けておいていただきたいんです。その上で火にかけて、沸騰直前に取り出していただくのがいいと思います。
でもご家庭では、水出しの昆布だしをぜひ冷蔵庫に常備してくださいとおすすめしてるんですよ。ごはん支度をしようと思った時に、すでに天然だしのストックがあって、ジャボジャボと注ぐだけで料理が始められる、っていうその快適さを、ぜひ味わっていただきたいですね」


冷茶ポットに水と入れて放っておくだけ!手間いらずでおいしいだしがとれます。

水出し法をマスターして、冷蔵庫に昆布だしを常備しよう!!

  • 冷茶ポットを用意し、水1 リットルに対し約20グラムの昆布を入れて、8 時間置く。
  • 昆布を入れっぱなしにしておくとぬめりが強くなるため、8時間を過ぎたら昆布を取り出すのがベター
    (取り出した昆布はラップで包んで冷凍保存して料理の具材に)。昆布だし自体は、冷蔵で3~4日はもつ。
  • 好みで鰹節(厚削りのもの)や煮干しを一緒に浸けておいてもうまみの濃いだしに。

なるほど!これなら忙しくてもズボラさんでも、顆粒だしに頼らないでお料理上級者気分が味わえますね。ごはんを炊くのにこの昆布だしを使えば、炊き上がりがぐんとおいしくなるというのも耳寄りな話。

「天然の昆布を使えば少量でもおいしいだしが出ますし、だしをとった後の昆布も、現代人に必要な栄養素をたっぷり含んだ優秀な食材なんです。たとえばカルシウムやマグネシウム、塩分排出効果のあるカリウムも豊富です。それに今注目を浴びているのが昆布に含まれる水溶性食物繊維のアルギン酸やフコイダンですね。老廃物や発がん性物質、コレステロールなどを包み込んで体外に輩出するのを助けると言われています」

いのちのふるさと、海が育てたうまみと健康効果のミラクルパワー。

「知れば知るほど、昆布ってスグレモノ。とくに塩分を控えたり、食物繊維をしっかり摂る必要がある妊娠授乳期には、ぜひ意識したい食材かも…。

「そうそう、昆布に含まれるうまみ成分はグルタミン酸というんですが、これは母乳にも豊富に含まれているんです。羊水と海の成分は近いと言われますし、もともと生命が海から生まれたことを考えると、なんだか神秘的なつながりを感じますよね」

赤ちゃんはおかあさんの胎内にいる時から、すでに味覚や嗅覚の発達が始まっていると言われます。幼いうちからできるだけ自然のうまみに触れさせてあげることは、食育にもつながりますね。

「今日は最後に“本当の素うどん”をお出しします。真昆布と鰹のだしに醤油しか加えていないおつゆ、味わってみてください」


運ばれてきたうどんをひと口すすって、一同びっくり。「これでみりんもなしですか?」だしと醤油だけとは思えないほど、甘く深いうまみがあります。

おなかにじんわり、しみわたるようなおいしさ! あと口まで心地よい余韻が残る味わいで、身体が喜んでいるのがわかります。
これまであまり深く考えることも意識することもなく、ただ何となくセオリーどおりに使っていた昆布でしたが、今日は改めてその底力に脱帽。これまで以上に昆布を使いこなして楽しみたい欲求もムクムクと湧いてきましたよ!
素敵なレクチャーを聞かせてくださった藤橋さん、そしてキッチンで黙々とだしやうどんを準備してくださった山田さん、どうもありがとうございました。

そんなわけで、後篇では昆布だしや、だしをとった後の昆布を手軽に楽しく活用できるレシピを「月とみのり」がご提案します。
どうぞお楽しみに!

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