特集

野菜ソムリエと訪ねる

ぼちぼち農園さんの
野菜ごはん

兵庫県丹波で無農薬の野菜作りに取り組む
潮屋さんご夫妻の「ぼちぼち農園」で
野菜の魅力、新発見!

初めての味噌仕込みと、寒さも吹き飛ぶ幸せごはん

うちで採れた青大豆を使って味噌作りをしませんか?とのお誘いに、「喜んで!」と出かけた取材班。寒さがこたえる冬の畑仕事の合間にも、工夫をこらして暮らしを楽しむ「ぼち農」さんに刺激を受けっぱなし。シリーズ完結編となる冬の回、その内容はいかに?

妊娠・授乳期に心がけたい、野菜たっぷり健康的な「産育食」生活。
連載「ぼちぼち農園さんの野菜ごはん」では、野菜が育つ畑と、そこで働く人の食卓を、野菜ソムリエが訪ねます。
近ごろ野菜不足かな?なんて人も必見!知られざる野菜の魅力いっぱいです。

ぼちぼち農園さんのこと


お互い「しおちゃん」「涼子ちゃん」と呼び合い、息の合った掛け合いが楽しいおふたり。三度三度の手作りごはんが元気の素です。

兵庫県丹波市にて、農薬・化学肥料不使用の野菜作りに取り組む潮屋さんご夫妻。「月とみのり」の産育食に、たくさんのヒントを与えてくれるパートナー農家さんです。2011 年にこの地に移住して以来、野菜作りだけでなく、天然酵母パンや自家製味噌にいたるまで、手作り生活を実験&実践中。

HPhttp://bochinou.com/

訪ねる人 仲田友梨
日本野菜ソムリエ協会認定ジュニア野菜ソムリエ
みらいたべるスタッフ
産育食レシピ開発に関わりながら、野菜のスペシャリスト目指して日々勉強中!

味噌作りって意外に簡単!「手前味噌」は愛着もひとしおです

「おはようございまーす」。朝9時半にぼち農さんに到着すると、庭に用意されたかまどではすでに大なべが湯気を上げています。近づくと豆の甘い香りがぷーん。12月に収穫した青大豆1.5kg分は、早朝6時半から3時間じっくりと茹でられて準備万端です。

「豆は指でつぶせるぐらいになったらOK。ちょっと栗みたいにほくほくと甘味があって、これだけでもおいしいんですよね」

健太郎さんの言葉につられ、少し青みがかった茹で豆を口に含むと、うーん!確かに止まらなくなりそうなおいしさ。さあそれではいよいよ味噌作り初体験、始まります。

ワイワイ言いながら楽しんだ、味噌作り体験はこんな感じ!

◇ 材料(5L保存容器ひとつ分)

  • 大豆500g
  • 米麹1000g
  • 塩 300g
  • 種水(豆の茹で汁) 175g前後

【豆を茹でる】

豆は洗って3倍量の水に1~2日ぐらい浸けてから茹でます。力を入れなくても指で豆がつぶせるぐらいの柔らかさが目安。茹で汁も味噌づくりに使うので、捨てないでとっておきます。

【豆をつぶす】

今日は3人で作るので茹で上がった豆を三等分(一人当たり乾燥豆で500g相当)。熱湯消毒やアルコールスプレーで滅菌したボウルやたらいで、豆をつぶします。豆のあったかさが気持ちよくて、無心になってしまう楽しさ!量が多い時は足で踏んでつぶすのもアリとか。粒の残し具合もお好み次第です。

【塩と米麹を混ぜる】

豆が35~40℃ぐらいになったら、塩300gと米麹1000gを加え、よく混ぜ込みます。50℃を超す高温だと麹が死んでしまうので注意!ちなみにこの米麹も、ぼち農さんの手作り。米を蒸し、麹菌をまぶしつけて、もち箱に入れてフタをし、こたつで寝かせること2~3日。味噌作りで一番手間のかかる工程がこの麹作りですが、市販の米麹を使ってももちろんOK。

【種水を加えて混ぜる】

豆と塩と麹がよく混ざったら、とっておいた種水(茹で汁)を加えます。一度に加えないで、耳たぶぐらいの固さになるまで、様子を見ながら少しずつ混ぜていくのがポイント。

【保存容器に移す】

熱湯消毒した保存容器にポリ袋(漬物袋)を敷き、底に塩をまいてから、味噌を移します。塩の代わりに、焼酎やウォッカで拭くのも滅菌効果あり。ハンバーグを作る時のように、空気抜きをしながら味噌をボール大に丸め、容器の内側に打ち付けるように入れていくのがコツ。

【保存容器に移す】

周辺から詰めていき、一段敷き詰めたら、さらに空気を抜いてすき間ができないように表面をならし、同じ動作を繰り返します。

【表面に塩をふる】

全部詰め終えたら表面をきれいにならし、カビよけにさらに塩をふります。これで1人分約3kg前後といったところ。

【空気を抜いて袋の口を密閉する】

空気を抜きながらポリ袋の口をしっかりねじります。ポリ袋を使わない場合は、表面にガーゼをかぶせてラップで覆うやり方でもかまいません。

【重石をのせる】

最後に焼酎かアルコールで容器のフチを拭いて消毒し、重石(材料とほぼ同じ重さのもの)をのせて。おいしくなあれ~と念じながら、上からフタをします。

【風通しのよい冷暗所に保存する】

日付を書き込んで、できあがり!1ヶ月ぐらいしたら「たまり」と呼ばれる水が上がってくるので、全体に混ぜ込みます。その後は2~3週に一度様子を見て、カビが生えていたらそこだけ取り除いて、その都度全体を混ぜます。半年ぐらいから食べることができますが、最低1年ぐらいは寝かせたほうがよりおいしく楽しめるそう

これまで味噌作りと聞くと、ちょっとハードルが高そう…と身構えてしまっていたけれど、やってみると材料も工程も本当にシンプル。麹作りと豆を茹でる時間を除けば、約30分ほどで完了し、あとは発酵の力を借りて時間がおいしくしてくれるのを待つばかりです。

「置いておく環境によって発酵具合も違うので、こうやって同じ材料を使って作っても1年後にはそれぞれ全然違う味になってますよ。あとカビは必ず最低1回は生えると思っておいてください。緑やピンクのカビが出てひるむかもしれませんが、取り除いてしっかり混ぜてやれば大丈夫。地方によってはカビごと混ぜ込んでしまうところもあるらしいですから」

「月とみのり」編集部に持ち帰る味噌は、「カビごと混ぜ込み式」でやってみる?!と取材班は好奇心メラメラ、顔を見合わせます。今や自家製味噌作りがすっかり暮らしの年中行事と化している「ぼち農」さん。3年物もあると聞き、かめを開けて見せてもらうと、なんとも深いふくよかな色合いと香り!自分たちの手で仕込んだ「手前味噌」も、これからどんな味に育つのかと思うと、愛着ひとしおです。

3年物のかめを開けるのは、
まるでタイムカプセルを開けるような気分。
表面を覆ったガーゼごしにも、
ふわっといい香りが漂います。

冬の畑も見学!取材班が秋に植えた葉物も元気に育って…

味噌づくりの後は畑を見学。春・夏・秋のにぎやかな畑とは違い、何も植わってない畝が半分以上を占めますが、そんな中でもイキのいい冬野菜がしっかり力を蓄えています。

「今は夏野菜の片づけ(残った根を掘り起こして畑を元通りにすること)がやっと終わる時期なんです。3月までは植え付けもおあずけなので、収穫は葉物メインになりますね。手袋をはめてると収穫しづらいので素手でやるんですが、葉物を川の水で洗うのが冷たくて…。ポットでお湯を持っていって、バケツに入れて時々手を浸してあっためるんですが、手がしもやけでひび割れて、鏡餅みたいにバキバキになりますよ」

想像しただけでも身がすくむような厳しい作業ですが、それを毎日朝7時からお昼までこなします。午後からもイノシシに破られた網の補修など、土木作業系の用事があれこれとあって、気づけば夕方になってしまうそう。

秋に私たちが種蒔きをしたからし菜(レッドマスタード)。ややピリっとした風味があり、色合いも華やかなのでサラダにうってつけ。

これも私たちが蒔いた早池峰菜(はやちねな)。岩手県遠野地方に伝わる伝統野菜で、煮物、炒め物などに幅広く使えます。

ラディッシュローズは果肉がジューシーで焼いて食べてもおいしい!ぼち農さんのは甘味が強く、ピクルスにしても最高でした。

この時期欠かせないゆず。潮屋家では自家製ポン酢に、ゆず味噌に、と大活躍します。

野菜ソムリエ(日本野菜ソムリエ協会認定ジュニア野菜ソムリエ)が注目!
産育食におすすめの旬野菜

大根

【大根】

大根にふくまれる酵素のジアスターゼやアミラーゼは消化を助ける働きがあります。食欲のない時には大根おろしで胃もたれや胸やけ予防に。大根の葉は鉄、カルシウム豊富!捨てずにお味噌汁に入れるだけで栄養バランスアップ。煮干しと一緒にごま油で炒めてご飯のお供にするのもGood!!

水菜

【水菜】

産育食で意識したい葉酸、鉄、カルシウムがバランスよく含まれています。葉酸は熱に弱いので、サラダはおススメ。鉄はなんとホウレン草とほぼ同じぐらいの含有量。肉魚のタンパク質やビタミンCとあわせて食べると鉄の吸収がアップします。例えば、水菜チキンサラダにレモンドレッシングはいかが?

水菜

【キャベツ】

ビタミンC、葉酸、ビタミンKが含まれます。母乳にはビタミンKが少なく、おかあさんが不足すると赤ちゃんも不足しやすくなってしまいます。キャベツや緑黄色野菜からしっかりビタミンKを摂っておきたいですね。冬キャベツは葉がしっかり巻かれているものを、春キャベツは巻きがゆるやかなものを選んでください。

味噌が隠しテーマのランチは、真似したいアイデアがいっぱい!

ちょうどお昼どきになり、ストーブとこたつでぬくぬくなお部屋に戻った私たち。玄関先で大根が干されていたり、猫のシポコちゃんがこたつに潜り込んできたりするのも、心和む眺めです。
「黒豆茶を淹れますから、香ばしくなるまで炒ってくださいね」と涼子さんに黒豆の入った鍋を渡され、ストーブの上で軽く揺すりながら待つことしばし。じっくり炒った豆で抽出したお茶は、まさに黒豆の香りと滋味をストレートに感じる、初めての味わい。市販の黒豆茶とはまったく別物といっていいほどです。
そうこうしているうちに、健太郎さんの手料理が次々と並べられ、そのアイデアと美味に、私たちは一気に興奮状態に!

黒豆とえびのパクチーアヒージョ

黒豆とえびのパクチーアヒージョ

にんにく風味のオリーブオイルと、歯ごたえ豊かな黒豆がこんなにも合うなんて!ほどよい塩味で、たっぷり添えられたパクチーもいい仕事をしています。黒豆の使いみちって、おせちの甘い煮豆だけではないんですね。勉強になりました!

野菜のグリル

野菜のグリル

キャベツ、カリフラワー、ラディッシュローズ、にんじん2種、安納芋をグリルに。味付けはオリーブオイルと塩だけですが、野菜の甘みが濃くて、パワフルです。

しょうが味噌マヨネーズ

しょうが味噌マヨネーズ

グリル野菜に添えられたディップのベースとなるしょうが味噌は、青森ではおでんのお伴としておなじみとか。味噌とすりごま、砂糖、酒を合加熱しながら練り、最後におろししょうがを加えます。作り置きしておくと応用がききそう!

イノシシ汁

イノシシ汁

道の駅で売られていたイノシシの肉と、ごぼう、水菜、大根、にんじん、九条ネギ、ターツァイと、野菜もたっぷり。ご近所からたまたまもらったというイノシシの骨でだしをとって、昨年仕込んだ自家製味噌で仕上げたそう。

3種のお芋のグラタン 玄米クリームソース

3種のお芋のグラタン 玄米クリームソース

紫のさつまいもと里芋、そしてシェリーというじゃがいをグラタンに。ホワイトソースを使わず、玄米の米粉に水を加え、オリーブオイルや酒粕、味噌で味付けした和風ソースが、トロリとやさしい味です。

源助大根のポワレ ゆず味噌クリーム

源助大根のポワレ ゆず味噌クリーム

源助大根は、やわらかく甘味がある加賀野菜。米のとぎ汁で下茹でしてから、だしと醤油と酒で煮含め、小麦粉をはたいて表面をさっと焼きます。ゆず味噌に生クリームを加えたまろやかソースと香りづけのディルが、最高にマッチ!

金カブのミルフィーユ

金カブのミルフィーユ

まるで料亭の八寸みたい!ゆず味噌に豆腐を漬け込んでおいたものを裏ごしし、はちみつを加えてクリーム状にしたものを、三枚のカブ薄切りにサンド。真ん中のカブだけさっとバターでソテーして味なじみをよくする気遣いに、脱帽!

いつもながら、出てくるものすべてがおいしくて創意工夫がつまっていて、感激しきり。外食はほとんどせず、三度三度、家で手作りごはんを食べるという潮屋さん夫妻、「こんなアイデアをいったい、いつ、どこで?」と思わずにいられません。

「どこかで食べておいしかったものを自分なりに再現してみたり、ちょっとした思いつきを試してみたり…。でもレシピとかほとんど書きとめないから、毎回一期一会の味なんですよ。畑仕事でもそうなんだけど、人に聞いたり相談するより、自分であれこれ試してみながら、失敗も含めて経験を積んでいくのが、自分には合ってるし手っ取り早いのかなって」

毎年同じ作物を作っていても、気象から土の状態、野菜の個性などによって、いつもできあがりはまったく違うから、飽きないどころか常に試行錯誤の連続だとか。でもそうやって学んだことこそ、本当に血となり肉となるんですよね。現場で毎日料理を作っている私たちも、深く共感するところです。

「横で見てても、しおちゃんの熟練度が上がってるのを感じますよ。“前はこうだったから、今年はそろそろアレしておいたほうがいいな”とか、何気なく畑でつぶやいてることが、3年前とは明らかに違うんです」と涼子さん。

「太陽や土がなくても、コンピュータ制御で電気と水があれば野菜が作れてしまう時代ではありますけど、たとえば電気が切れたら作れなくなる、というのは怖いと思います。その点、うちは土があれば、どうにでも作れますから。結局どっちが自分にとって面白いか、でしょうね」

健太郎さんの言葉にうなずく私たち。農作物を作ることも、その作物を使って誰かのために料理を作ることも、マニュアル化できない「人の感覚」に支えられていること、それを忘れないようにしたいですね。お邪魔するたび、暮らしの本質を考えさせてくれた「ぼち農」さん。いったん連載は終了となりますが、これからも私たちのよきパートナーであることに変わりはありません。またゆっくり、お邪魔させてくださいね!

最後に感謝を込めておふたりの働きものな手をパシャリ!分厚くたくましい健太郎さんの手を「いい手ですよね、ナウシカに出てくるミトみたい」と表現する涼子さん。涼子さんのは、どんなに寒くてもしもやけ知らずな、白くてふわっと柔らかそうな手です。

念願の味噌仕込み初体験を果たし、食べられる日が早くも待ち遠しい今日この頃。
この春夏秋冬を通じて、野菜が土から育つ姿を見たり、健太郎さんのお料理を実食させてもらったり、まるごと野菜の魅力に触れられたおかげで、料理に対する私自身の思いも一層深まった気がします。潮屋さんご夫妻、どうもありがとうございました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします!

このページの上部へ