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妊娠期の食生活のおはなし

すこやかなお産のために

妊娠期の食生活のおはなし

気をつけたい食生活のポイント

いろいろな食品をバランスよく食べましょう

妊娠中に必要とされる栄養素は実にさまざまです。しかも、栄養素は単独で働くものではなく、互いに関係し合いながら作用しています。ですから、いろんな食品をバランスよく食べることが基本。
さまざまな栄養をまんべんなく自分の体に、おなかの赤ちゃんに届けてあげることが大切です。

とくに重要な栄養素を知っておきましょう

葉酸、鉄、カルシウムなどは妊娠期にとくに重要な栄養素です。これらの栄養素を少し意識するだけでも、日々の食事はずいぶんとバランスの取れたものに変わります。
まずはそれらの栄養素が含まれている食品を知ることから始めましょう。

余分な塩分や油脂をカットしましょう

これは、妊娠高血圧症候群の予防や、適正な体重のコントロールのために必要です。また、塩分、油分控えめの習慣は、今後の家族の健康のためにも役立ってくれます。妊娠を健やかなくらしにスイッチするきっかけにしてみませんか。

お母さんと赤ちゃんの健康のために上手に体重コントロール

健やかなお産と赤ちゃんの発育のためには、妊娠中の体重増加が多すぎても少なすぎても要注意。適正な体重増加を心がけましょう。体重コントロールのポイントは、実はバランスよく食べること。食べ方の工夫が大事です。

1週間単位でバランスがとれるよう心がけましょう

バランスや栄養のことを考えて食事をしたいけれど、仕事や家事、体調不良などでままならないこともあります。毎食ちゃんとしなければとストレスになるのも逆効果。あまり細かく考えず、1 週間単位で食事のバランスをふりかえるぐらいの気持ちで十分です。

妊娠期にとくに必要な栄養素

赤ちゃんの発育に欠かせない葉酸

葉酸は細胞分裂などに必要とされる栄養素で、おなかの赤ちゃんの発育にとくに重要。神経管閉鎖障害(脳や脊椎の先天異常)のリスクを減らすためにも葉酸の摂取を心がけましょう。また、葉酸はビタミンB12 と協調して造血機能にかかわり、貧血の予防も期待できます。葉酸は熱に弱く水に溶けやすい性質があるため、煮汁もいっしょに食べるとよいでしょう。

葉酸

多く含まれる食品
ほうれん草・ブロッコリー・アスパラガス・いちご・アボカドなど

労回復や成長促進をたすけるビタミンB群

ビタミンB1 は母体のエネルギー代謝、疲労回復に、ビタミンB2、B6、B12 は葉酸の代謝にかかわり、赤ちゃんの発育を助けます。
ビタミンB6、B12 は貧血の予防にも必要です。

多く含まれる食品
ビタミンB1:豚肉・大豆 / ビタミンB2:納豆・卵 /
ビタミンB6:まぐろ・鶏ささみ / ビタミンB12:あさり さんま

妊娠中はとくに必要量アップ!鉄

妊娠中は赤ちゃんが発育し、母体の血液量が増加するため鉄が必要になります。鉄には、動物性食品に多く含まれるヘム鉄と、植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄があります。ヘム鉄のほうが非ヘム鉄に比べて体に吸収されやすいとされています。非ヘム鉄は、ビタミンCや肉、魚などのタンパク質と一緒に食べると吸収されやすくなります。

多く含まれる食品
かつお・牛赤身肉・ほうれん草・大豆製品・ひじき

ビタミンDと協力し、強い骨や歯を作るカルシウム

妊娠中はカルシウムの吸収が高まるとされていますが、妊娠前から不足しがちな栄養素であるため、意識して摂ることを心がけましょう。赤ちゃんの発育や骨の成長にかかわるカルシウムの吸収にはビタミンD(*)は不可欠ですが、近年ビタミンDが不足気味の妊産婦が多くなっているといわれています。カルシウムとあわせて積極的に摂りたい栄養素です。

多く含まれる食品
プロセスチーズ・牛乳・しらす干し・切干し大根・小松菜
*ビタミンD/さけ・さば・いわしの丸干・干ししいたけ

赤ちゃんの発育、神経発達を促すEPA、DHA

赤ちゃんの神経系の発達のため、n-3系脂肪酸(EPA、DHAなど)を多く摂ることが大事です。
これらの摂取が不足すると、早産や低体重児出産のリスクが高いとする報告もあります。EPA、DHAは主に魚に多く含まれます。

多く含まれる食品
いわし・さば・ぶり・さけ

気になるトラブルと食事の工夫

妊娠中の気になるトラブルと食事の工夫を、妊娠の進行に沿って見てみましょう。
トラブルの有無や、あらわれる時期、程度は人によってかなり個人差がありますので、
おおよその目安として捉えてください。

気になるトラブル1 つわり

無理に食べなきゃと思う必要はありません。
気持ちを楽にして、食べられるものを、食べられる量でOK。
極端に食が進まない時は、主治医の先生に相談の上、サプリで栄養補給をするのもひとつの手です。
嘔吐がひどく水分補給がままならないと、脱水症状になるおそれがあります。
これも早めに主治医の先生に相談しましょう。

つわり

つわりの時の食事の工夫

  • 食べたいもの、食べられるものを食べる。
  • 空腹はつわりの症状を悪化させることがあるため、少量に分けて食べる。
  • 空腹のときに手軽につまめる好みのものを用意しておく。
  • 食べ物のにおいが気になるときは、冷蔵庫で保存してから食べる。
  • 水分補給をこまめにし、脱水症状を防ぐ。

気になるトラブル2 体重の著しい増減

妊娠中の体重増加が著しく多い場合には、赤ちゃんの成長に影響をおよぼし、妊娠高血圧症候群や出産時のリスクなどが高まるとされています。逆に体重増加がいちじるしく少ない場合は、低出生体重児が生まれるリスクが高くなります。

妊娠中の1 日に必要なエネルギー量の目安

平常時より多くのエネルギーを必要とする妊娠期。
食事の量を増やすのではなく、いろいろな食品を少しずつ品数を増やすよう心がけると、体重コントロールもしやすくなります。
*身体活動レベルⅡ(ふつう) 日本人の栄養摂取基準2020年版(厚生労働省)より


*何をどれくらい食べたらいいのかは、「 妊産婦のための食事バランスガイド」を参考にしてください。
*「妊産婦のための食事バランスガイド」厚生労働省 参照
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3b02.pdf

妊娠中の体重増加の目安

主治医の先生と相談しながら、適正な体重の増加量を理解しておきましょう。

*妊産婦のための食生活指針(厚生労働省)より

体重増加が著しく多いときの食事の工夫

  • いままでの食事に低カロリーな副菜を1品加えて、全体のボリュームは減らす。
    (加える一品は手作りでなくても、納豆、もずく酢、ヨーグルトなど市販のものを活用してもよい)
  • 欠食を避ける。何か手軽に食べられるものを準備し、食事のリズムを保つ。
  • 根菜、いも類、豆類、海藻類を意識して食事に取り入れる。
  • 具材は大きめに切り、よく噛んでゆっくり食べる。
  • 薄味を心がける。しょうがなどの薬味、香辛料、酢やレモンの酸味を活用して塩分を控える。
  • 揚げもの、炒めもののかわりに、煮もの、蒸しものにする。
  • 肉類の余分な脂のかたまりはカットする。

体重増加が著しく少ないときの食事の工夫

  • いままでの食事に一品加えてボリュームを増やす。一回の食事で食べられない場合は間食を増やす。
  • 欠食を避ける。何か手軽に食べられるものを準備し、食事のリズムを保つ。
  • 肉、魚の主菜をバランスよく取り入れる。

妊娠中の無理なダイエットにご用心!

妊娠中のある時点で体重が増加し、それをカバーしようと過度なダイエットを行った場合、一時的にでも胎内では低栄養状態になることが考えられます。これはDOHaD 説の観点から、赤ちゃんの将来の健康にとって望ましいことではないとも指摘されています。体重を減らすための「食べないダイエット」ではなく、いろいろバランスよく食べて様々な栄養素を働かせ、赤ちゃんとおかあさん自身の体を育むイメージが大切です。
また、妊娠中の体重増加と母乳に含まれる脂肪濃度には相関関係があるとされています。母乳の脂肪は、赤ちゃんのエネルギーや必須脂肪酸の供給源として欠かせないものです。
妊娠中の極端なダイエットは母乳の質にも影響を及ぼすため避けるべきことといえます。

気になるトラブル3 貧血

妊娠中は赤ちゃんの発育のため鉄が必要になるうえ、母体の血液量も増加するため貧血になることがあります。
貧血になると赤ちゃんの発育に影響を及ぼし、低出生体重児の出産や早産などのリスクが上がるとされています。
貧血

貧血を防ぐ食事の工夫

  • 赤身の肉や魚など、吸収されやすいヘム鉄を多く含む食品を意識して食べる。
  • 大豆、ひじき、小松菜など非ヘム鉄を含む食品は、肉・魚などのタンパク質やビタミンCと合わせて食べる。
  • 葉酸、ビタミンB6、B12 を多く含む食品を意識して食べる。
  • 鉄製のフライパン、鍋を使って調理する。

気になるトラブル4 便秘

妊娠中はホルモンバランスの変化や、大きくなった子宮が腸を圧迫することにより便秘になりがちです。

便秘を防ぐ食事の工夫

  • 食物繊維を多く含む食品(豆類、きのこ、海藻類、いも類)を意識して食べる。
  • 水分をしっかりとる。
  • ヨーグルト、納豆、みそなどの発酵食品を食べ、腸内環境を改善する。
  • 食事のリズムを保つ。

便秘の予防には、1 日に25 ~ 30g の食物繊維を目安に!


1食分当たりに含まれる食物繊維の含有量(日本食品標準成分表より)

気になるトラブル5 冷え

妊娠中に冷えがあると、倦怠感、頭痛、腰痛といったマイナートラブル(妊娠中に起こりやすい不快症状)が強くなるといわれています。また妊娠後期の冷え症は、早産、微弱陣痛などの発生率と関係性があると推定する報告もあります。下記のような冷えを防ぐ食事を心がけ、着るものや冷暖房などで上手に調節しましょう。

冷え

冷えを防ぐ食事の工夫

  • 冷たいものを避け、温かいものを食べる。
  • よく噛んで食べる。よく噛むことで、消費エネルギーが増え体熱発生につながる。
  • しょうがなど体をあたためるとされる食品を食べる
  • タンパク質、ミネラル、ビタミンがバランスよく摂れるよう、いろいろな食品を食べる。
    タンパク質は消化、分解の過程で体熱を発生し体を温める。また、ミネラル、ビタミンが不足すると熱を産生できず、冷えを招くとされる。

気になるトラブル6 妊娠高血圧症候群

妊娠20 週以降、分娩後12 週まで高血圧症状がみられる場合などを、妊娠高血圧症候群と呼んでいます。今のところ妊娠高血圧症候群のはっきりとした原因は分かっておらず、効果的な予防法も見つかっていないと言われていますが、食べすぎや塩分の摂りすぎ、BMI25 以上の肥満などのケースが、妊娠高血圧症候群を引き起こす要因になりやすいと見られます。
しかしながら、極端な体重の減量や塩分の過度な摂取制限もかえって望ましくないため、バランスよく規則正しく食べて適正な体重増加を保つことと、塩分は1 日6.5g以下を目安とし、薄味を意識することを心がけましょう。

妊娠高血圧症候群を防ぐ食事の工夫

  • 欠食を避けて食事のリズムを保つ。
  • 根菜、いも類、豆類、海藻類を意識して食事に取り入れる。
  • 具材は大きめに切り、よく噛んでゆっくり食べる。
  • 揚げもの、炒めもののかわりに、煮もの、蒸しものにする。
  • 肉類の余分な脂のかたまりはカットする。
  • 薄味を心がける。しょうがなどの薬味、香辛料、酢やレモンの酸味を活用して塩分を控える。

注意が必要な食べ物、成分

レバーなどに含まれるビタミンAの摂りすぎ

ビタミンAはお腹の赤ちゃんの発育に不可欠ですが、過剰摂取は赤ちゃんの先天異常を増加させる危険があるとされています。
妊娠を計画する女性、妊娠3ヶ月以内の妊婦は、レバーなどビタミンAを多く含む食品、ビタミンAを含むサプリメントなどを継続的に大量に摂取することは避けることが大切です。
妊娠期のビタミンA摂取量の上限は、1 日当たり2700μgRAEとされています。
1日に食べてもよい量は以下を参考にしてください。

緑黄色野菜などに含まれるβ-カロテンは、ビタミンAが不足した場合に体内でビタミンAに変換されるので、過剰摂取の心配はありません。

リステリア食中毒

リステリア菌による食中毒に注意しましょう。妊婦はリステリア菌に感染しやすく、赤ちゃんに影響がでることがあります。リステリア食中毒の主な原因食品としては、加熱殺菌していないナチュラルチーズや生ハムなどが挙げられています。これらは妊娠中は避けたほうが良いとされています。
リステリア食中毒に限らず、他の食中毒を予防することも同じく大事です。
食中毒になると、下痢や嘔吐により脱水症状となりトラブルを招く場合があります。

リステリア食中毒の主な原因食品例

  • ナチュラルチーズ(加熱殺菌していないもの)
  • 生ハム
  • スモークサーモン
  • 肉や魚のパテ

詳しくは厚生労働省のパンフレットおよび関連情報を参考にしてください。
これからママになるあなたへ「食べ物について知っておいてほしいこと」
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/dl/ninpu.pdf

ミナミマグロ、キンメダイなどに含まれる水銀

魚介類は良質なタンパク質、EPA、DHAなどの脂肪酸やカルシウムが豊富で、妊娠期におすすめの食品ですが、一部の魚介類については食物連鎖の関係で水銀を多く含んでいるものもあります。水銀濃度が高い魚介類を多量に食べることは避けましょう。

詳しくは厚生労働省のパンフレットおよび関連情報を参考にしてください。
これからママになるあなたへ「食べ物について知っておいてほしいこと」
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/100601-1.pdf

たばこ

たばこにはニコチンや一酸化炭素といった有害物質が含まれています。
ニコチンは血管を収縮させ、子宮や胎盤の血液量を減少させます。
また、一酸化炭素は血液に作用してお腹の赤ちゃんが低酸素状態になります。
喫煙している妊婦は低出生体重児の出産の頻度が高いという報告があるほか、流産や早産のなどの発生率も高いといわれています。受動喫煙も同様におなかの赤ちゃんに影響があるとされていますので、周囲にも理解してもらい、協力してもらいましょう。

アルコール

妊娠中にアルコールを日常的に飲むと、
赤ちゃんの知能障害や発育障害の可能性が高まります。常用でない場合に、どれくらいの量のアルコールをどの時期に飲めば赤ちゃんに影響があるのかについては、まだはっきりとは分かっていません。万全を期すためにも、妊娠計画中や妊娠に気づいてからは禁酒に努めましょう。

コーヒーや紅茶に含まれるカフェイン

妊娠中のカフェイン摂取が赤ちゃんに及ぼす影響については、確かな科学的根拠はありませんが、多くの研究報告から1 日に1~2杯のコーヒー(カフェイン200mg未満程度)であれば問題はないと思われます。

カップ1杯(150cc)に含まれるカフェイン量の目安(日本食品標準成分表より)