夏野菜を収穫し味わう、極上の農園ピクニック

食について

7月を迎え「ぼち農」さんの畑もいよいよ夏本番。猪の被害にもめげず、今日も汗を流して働く潮屋さん夫妻を訪ねました。じゃがいも収穫と黒豆植え付けの体験後には、あっと驚く素敵な戸外ランチが!

妊娠・授乳期に心がけたい、野菜たっぷり健康的な「産育食」生活。
連載「ぼちぼち農園さんの野菜ごはん」では、野菜が育つ畑と、そこで働く人の食卓を、野菜ソムリエが訪ねます。
近ごろ野菜不足かな?なんて人も必見!知られざる野菜の魅力いっぱいです。

ぼちぼち農園さんのこと


潮屋健太郎さんと涼子さん。涼子さんが着ているのは、「ぼちぼち農園」オリジナルTシャツ2015年版。

兵庫県丹波市にて、農薬・化学肥料不使用の野菜作りに取り組む潮屋さんご夫妻。「月とみのり」の産育食に、たくさんのヒントを与えてくれるパートナー農家さんです。2011 年にこの地に移住して以来、野菜作りだけでなく、天然酵母パンや自家製味噌にいたるまで、手作り生活を実験&実践中。

HPhttp://bochinou.com/

訪ねる人 仲田友梨
日本野菜ソムリエ協会認定ジュニア野菜ソムリエ
みらいたべるスタッフ
産育食レシピ開発に関わりながら、野菜のスペシャリスト目指して日々勉強中!

珍しい野菜がいろいろ!畑は潮屋さんの実験場です

私たちが「ぼち農」さんを再訪したのは、ひと雨ごとに緑が萌え茂るような、7月上旬のある日。畑では、カエルがあちこちで飛び跳ね、夏野菜がぐんぐん育っています。

「最近は朝4時起きで、4時半には畑に出ています。今年は春の端境期に天候不順のせいですごく収穫が少なくて、お客さんに送る定期便がいつストップするか…と毎日ヒヤヒヤしていたので、今みたいに採っても採っても次から次へと野菜があるのはうれしいですね」

珍しい野菜のタネを見つけると、栽培にチャレンジしたくなってしまうという健太郎さん。畑を歩きながら作物を見せてもらっていると、珍しい野菜の名前が次々飛び出します。少量ずつながら多品種が育つ畑は、まるで未知の味が詰まった玉手箱のようで興味津々!

【バターナッツ】
アメリカでポピュラーな、ひょうたんみたいな形状のかぼちゃで、ナッツのような風味とねっとりした果肉が特徴。8月には収穫期を迎えます。

【オイスターリーフ】
噛むと生牡蠣の味がするという、驚くべき変わりダネで、まだ流通量も少ない高級食材。昨年初めて植えつけて、実験的に栽培中です。

【ハンダマ】
潮屋さんが沖縄で食べて魅了されたというハンダマは、沖縄全域で栽培・自生している薬用野菜。葉が肉厚で歯ざわりがよく、炒め物や和え物に。

【うすべにあおい(ブルーマロウ)】
ヨーロッパでは古代より栽培されてきたハーブ。花びらにお湯を注ぐと、青いハーブティになります。葉や花びらはサラダに入れて生食にも。

野菜ソムリエ(日本野菜ソムリエ協会認定ジュニア野菜ソムリエ)が注目!
産育食におすすめの旬野菜

じゃがいも

【じゃがいも】

ビタミンCが豊富!じゃがいものビタミンCはでんぷんに守られているため、加熱しても壊れにくいのが特徴です。ビタミンCは心身のストレスへの抵抗力を高め、皮膚や粘膜の健康維持に必要。
保存の際は、りんごと一緒にポリ袋に入れておくと発芽が抑えられます。

空芯菜

【空芯菜】

茎の中が空洞になっているのが名前の由来。産育食で意識したい葉酸、鉄がたっぷりで、シャキシャキの歯ごたえもたまりません。シンプルな炒め物もおいしいのですが、「ぼち農」さんおススメの食べ方はなんと、お好み焼き。刻んで入れると美味!だそうです。

つるむらさき

【つるむらさき】

夏のネバネバ野菜の一つ。独特の青臭さがありますが、ごま油と合わせると食べやすくなりますよ。おひたしやナムルにしても、さっとツナと炒めても美味。オクラ、モロヘイヤと合わせたネバネバトリオもおすすめです。カルシウム豊富だから、赤ちゃんやおかあさんの骨を丈夫に。

猪の襲撃から生き残ったじゃがいもを、いざ収穫!

春から初夏にかけては天候不順だけでなく、夜ごと畑を食い荒らしにやってくる猪にも泣かされたそう。畑のぐるりにワイヤーフェンスを張り巡らせても、わずかな隙間から突破されたり、その攻防戦はまさに人と獣の知恵くらべ。取材斑が春に植えたじゃがいもも、無残に掘り返されてしまい、再度植え直すハメになったとか。農薬・化学肥料を使わない、健康な野菜づくりに取り組む「ぼち農」さん。その作物の美味しさに、もしかしたら猪も味をしめてしまったのかも?

「植え直したやつも結局またやられたので、無事残ってるのは少しだけなんですけど、今ちょうど収穫時期なので、今日は一緒にやってみましょうか」

健太郎さんに教わりながら、慣れない手つきで鍬をふるう取材班メンバー。鍬をサクッと畝の横っぱらに打ち込み、テコのように土を掘り起こして、中からじゃがいもの姿が見えたら、手で土をかき分けて取り出して。まるで宝探しみたいな気分で楽しい!


この日収穫したのは「シェリー」と「とかちこがね」の2種。鈴なりになったじゃがいもを見るとテンションが上がります。

「じゃがいもの実って見たことあります?」と手渡されたのは、プチトマトみたいな青い果実。そう、私たちが食べているじゃがいもは「茎」に当たる部分で「根」とも「実」とも違うんです。

秋の準備も始めてます。丹波名物黒豆は今が蒔きどき!

「今日は黒豆の植え付けもやってみませんか?」

健太郎さんに誘われ、乾燥黒豆の袋を受け取った私たち。ああ!そうか、黒豆って蒔けば芽の出る「種」なんだ、なんて当たり前の事実に改めて気づかされます。黒豆を植えるのは、3か所ある潮屋さんの畑のうち、もっとも山の近くに位置するところ。そして2014年夏に丹波を襲った豪雨の被害がもっとも大きかった畑でもあり、復旧に丸1年かかったため、しばらくは作物を育てるどころではありませんでした。

「ほんとはここの畑の土が一番よくなってたんです。なのに水害で土が流されてしまって。結局近くの田んぼから土をもらったんですが、畑向きの土ではないので、何度も何度も耕しては砂地と混ぜて…。トラクターの歯が飛ぶぐらいカチカチだったのが、ようやく植え付けできるところまで来たかなあという感じです。あとは作物を植えて、いい畑の土になるまで、また使い込んでいかないと」

そう話す涼子さんの口調はおっとり淡々としていますが、土を頼りに生きるということの、自由と隣り合わせにある厳しさも物語っているようでした。


豆の苗が2本寄り添って伸びる「2本立て」で育てるのが「ぼち農」さんのやり方です。

先日種蒔きをしたあとをなぞるように、発芽していないところに種を補てんする作業を行いました。

農作業のあとの戸外ランチは、素敵なサプライズに満ちて

やがて村にお昼を告げるメロディが響き渡り、作業は小休止。庭にはあれよあれよという間にランチのテーブルがしつらえられ、健太郎さんが腕を振るった手料理が並びます。
「さっき収穫したじゃがいももありますよ」と健太郎さん。畑から採れたての野菜を、畑の風に吹かれながら食べるなんて、最高の贅沢です。

オイスターリーフとソレル

オイスターリーフとソレル

オイスターリーフは噛むほどに鼻に抜ける香りが生牡蠣そのもの。酸っぱいハーブ「ソレル」を添えれば、脳内にはまさにレモンを絞った生牡蠣のイメージが再生されるよう。畑で採れるものにこんなに海の香りを感じるなんて、衝撃です。

和風ヴィシソワーズ

和風ヴィシソワーズ

シェリーとレッドムーンとキタアカリという3種のじゃがいもを、少量の米、炒めた玉ねぎとともに水煮し、塩コショウと味噌、みりん少々で味付けして裏ごししたもの。乳成分を一切加えず、じんわり滋味が広がる和風味に仕上げて。

自家製ベーコンと夏野菜のサンドイッチ

自家製ベーコンと夏野菜のサンドイッチ

健太郎さんが土鍋の燻製器で作った自家製ベーコンを、夏野菜やマスタードと合わせて。にんじんはベーコンの脂で炒めているので、ほどよい歯ごたえ。チコリの苦みがベーコンによく合います。

平飼い卵とバジルのサンドイッチ

平飼い卵とバジルのサンドイッチ

平飼い卵をゆでてほぐし、自家製マヨネーズと刻んだバジルで和えて、サラダ菜とともにサンドに。バジルの爽やかさが、まろやかなマヨネーズ風味のアクセントになっています。

自家製アンチョビ入りポテサラのサンドイッチ

自家製アンチョビ入りポテサラのサンドイッチ

アンチョビまで手作りしちゃうんですか!?と取材斑もびっくり。つぶしたじゃがいもに刻んだ紫玉ねぎとにんじんを加えて、歯ごたえと香りを添えて。

ブルーチーズとはちみつのカナッペ

ブルーチーズとはちみつのカナッペ

ブルーチーズをのせて焚火で軽くグリルしたカナッペは、熱いうちにはちみつをトロリとかけて。ぴりっとした刺激のあるチーズの塩味と、はちみつの甘味が溶け合う、やみつきになる味。

採れたて野菜のグリル

採れたて野菜のグリル

取材斑が収穫したじゃがいもに加え、白ズッキーニとビーツもホイルでくるんで焚火でじっくりグリルに。野菜そのものの甘味がしっかり感じられて、何も味付けがいらないほど。

伊予赤健美どりの山椒風味味噌グリル

伊予赤健美どりの山椒風味味噌グリル

焼いた鶏肉の表面に、味噌とポン酢と少量の砂糖、山椒オイルを混ぜた合わせ調味料を塗り、最後にバーナーで軽く焦げ目がつくまで焙ってできあがり。サラダにはハンダマ、レタス、スイスチャード、チコリ、きゅうりを。

赤ジソゼリー

赤ジソゼリー

夏のテーブルにぴったりな爽やかデザート。畑で採れた赤シソをグラグラ茹でて、砂糖とクエン酸を加え作った赤ジソシロップは、この時期の定番。水や炭酸で割ってドリンクにしたり、こんなふうにゼリーにも。

「なんで畑始めたの?とよく聞かれるけど、自分がおいしいもの食べたいから、っていう動機が一番大きいかもしれない(笑)」

くしゃっと照れたように笑う健太郎さん。自分が信じられるものを自分の手で作り育てる。そうやって暮らす潮屋さん夫妻のまわりには、いつしか同じようなスタンスでものづくりに取り組む人の輪が広がってきたそう。

「お茶や器や調味料は、時々野菜を売りに行く手作り市で、顔見知りになった人から対面で買うのが楽しいんですよね。ちゃんと作ってることが分かるし。ジャム500円だったら、じゃあ野菜で払うわ、なんて物々交換したりもして。そういうのシンプルでいいですよね」

おなかいっぱい、しあわせで満たされた私たちは、そんな言葉を聞きながら、なんだかお金で計れない「豊かさ」のひとつのかたちを垣間見たような気がしたのでした。

取材から帰ると、さっそく健太郎さんを真似て赤ジソシロップを仕込んだ私。
「特別な材料を使わなくても、その時手元であるもので工夫して作るのが好き」
という言葉に、ふだん産育食レシピを作っている私たちも深く共感!
ぼち農さんからもらったたくさんのヒント、これから生かしていきますね。
次回は秋の畑で黒豆が収穫できるかもと思うと、今からワクワク楽しみです!

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