【産育食ラボ】 妊娠中の大豆やイソフラボンが子どもの行動に影響するってホント?
産育食ラボからレポートです。健康に良い食材として注目を浴びることが多い大豆。お腹にいる赤ちゃんにとって影響はあるのでしょうか?
「妊娠してから食べ物に気を配るようになった」という方は多いのではないでしょうか。妊娠は食生活を見直すよい機会です。今まで好きなものばかり食べていたという方も、お腹の赤ちゃんのことを考えてバランスのよい食事を心がけておられることでしょう。でも、お母さんが食べたものはお腹の赤ちゃんにどのように影響するのでしょうか? 今回は、妊娠中の食べ物と生まれてきた子どもの発達との関係を調べた研究をご紹介します。
【大豆の「イソフラボン」は女性ホルモンに似た構造や働きがある】
妊娠中の食べ物がお腹の赤ちゃんに与える影響について、研究が進んでいます。このたび愛媛大学のグループが行った研究によると、妊娠中の「大豆」は生まれてくる子どもの「行動」の発達に影響を与える可能性があるようです。
大豆は日本人にとって、なじみ深い食材のひとつです。味噌やしょう油、豆腐や納豆など、日本には大豆を使った食品がたくさんあります。大豆には、タンパク質や水溶性の食物繊維だけでなく葉酸も多く含まれることから、妊娠中に積極的にとりたい食材のひとつです。
ただし、摂りすぎには注意が必要です。大豆に含まれる「イソフラボン」という成分は、女性ホルモンのひとつである「エストラジオール」とよく似た構造をしています。ホルモンは体を正常に保つために欠かせない要素です。女性ホルモンの量がうまく調節されることで、女性の体は妊娠の準備が整ったり、妊娠を継続したりすることができます。イソフラボンは女性ホルモンに似た作用を持ちますが、お母さんが妊娠中に摂取した大豆やイソフラボンがお腹の赤ちゃんにどのように影響するのかについては、明らかになっていませんでした。
このたび愛媛大学の研究グループは、大豆がお腹の赤ちゃんに与える影響について「九州・沖縄母子保健研究」に参加したお母さんと子どもを対象に調査を行いました。「九州・沖縄母子保健研究」は、母子の健康問題の予防や健康増進を目的に行われている研究です。今回は、生まれたお子さんが5歳のときの追跡調査に参加した1199組が対象です。お母さんたちが妊娠時に回答した食事に関する調査結果をもとに、5歳時の子どもの行動と大豆食品の摂取量との関係を調査しました。
【妊娠中に納豆を食べると、友達と仲良くできる子どもになる!?】
妊娠中の大豆製品の「摂取量」によって、お母さんは4つのグループに分けられました。生まれた子どもの行動については、子どもが5歳になったときに、情緒面や仲間との関係、また、落ち着きがない(多動)など、5つの項目について評価を行いました。
解析の結果、妊娠中の大豆製品の総摂取量が多いほど、生まれた子どもが5歳の時に多動や仲間との関係などの問題が少ないことがわかりました。
さらに、どのような大豆製品が関連するかを調べたところ、妊娠中に「納豆」を多く食べていたほど、子どもの多動問題が少なくなる傾向がありました。また、「イソフラボン」そのものの摂取量についても調査を行い、イソフラボンの摂取量が多いほど多動問題が少なくなることがわかりました。
その一方で、妊娠中に食べた豆腐や煮物、味噌汁の量と、子どもの行動との関係は認められませんでした。
以上の結果から、妊娠中に摂取する大豆の総摂取量が多いほど、生まれた子どもの5歳時の行動問題が低くなる可能性が示されました。中でも、特に納豆を食べた量が多いほど、多動問題が低くなることがわかりました。
今後は、大豆がお腹の赤ちゃんに影響を与える仕組みや、どれくらいの大豆をどのように食べればよいかなどについての研究が期待されます。
【大豆以外にもある! 子どもの行動に影響する食材は?】
愛媛大学の研究チームは、大豆以外にも、さまざまな食材や栄養素と子どもの行動との関係について調査をしています。例えば、妊娠中の柑橘類やカルシウムは、子どもの情緒や多動などの問題を低下させる傾向があります。その反対に、リノール酸やαリノレン酸などを妊娠中に多く摂ると、子どもの情緒面に問題が起こるリスクが高くなる傾向があるそうです。
こんなふうに聞くと、「いったい何を食べればいいの?」と悩む方もおられるかもしれませんね。でも、大切なのは「バランス」ではないでしょうか。何かひとつの栄養素や食材だけに偏ることなく、いろいろな食材を使った食事を、適量食べることが健康を保つ基本です。お母さんの食生活がお腹の赤ちゃんの健康にも繋がることを意識して、毎日バランスよくきちんと食べるようにしてくださいね。
ご紹介した論文
Maternal consumption of soy and isoflavones during pregnancy and risk of childhood behavioral problems: The Kyushu Okinawa Maternal and Child Health Study.Miyake Y et al.
International Journal of Food Sciences and Nutrition
DOI: 10.1080/09637486.2021.1904844
妊娠中の大豆やイソフラボンが子どもの行動に影響するってホント?