【産育食ラボ速報】妊婦さんが腸内細菌不足だと、子どもの脳の発達に悪影響!?
産育食ラボから速報です!
妊娠中は食べられなかったり食べ過ぎたり便秘になったり、と胃腸の不調が多い時期。
産育食ラボから、気になる腸内環境と赤ちゃんの発達について最新研究のレポートです。
このサイトでは「妊娠中の栄養と赤ちゃんの健康」について、最新の研究をわかりやすくお伝えしています。
福井大学の研究チームが行った発表によれば、妊娠中にお母さんの腸内細菌が少ないと、生まれたお子さんに発達障害が出る可能性があるとのことです。研究結果は国際的学術雑誌「PLOS one」に掲載されました。
【腸内細菌が子どもの行動に影響するの?】
福井大学こころの形成発達研究部門の栃谷史郎特命助教らは、お母さんの腸内細菌が赤ちゃんにどのような影響を与えるかを調べるために、マウスを用いて実験を行いました。実験では妊娠中のマウスに抗生物質を与えます。すると抗生物質によって、腸内細菌が減ってしまいます。このような方法で腸内細菌を減らした母マウスから生まれた子マウスについて、体重や行動を観察しました。
腸内細菌の少ないお母さんから生まれた子マウスの生後1週間目の体重は、正常な子マウスよりも軽くなりました。また行動観察を行ったところ、活動時間帯になってもあまり活発に動き回らず、飼育箱の壁沿いにいることが多かったのです。これは不安感の表れだと考えられます。
実験ではさらに、正常なお母さんから生まれた子マウスを、腸内細菌を少なくした母マウスに育てさせました。するともともと正常だった子マウスも、体重が通常より軽く、行動にも異常が出ることがわかりました。反対に、腸内細菌の少ない母親から生まれた子マウスを正常な母マウスに育てさせると、体重も行動もほぼ正常でした。この実験結果から、赤ちゃんマウスは生後に腸内細菌を受ける機会が減ることで、異常が出ることがわかります。
【健康のカギを握る腸内細菌】
腸内細菌は腸の中に住む菌を総称した呼び名で、「腸内フローラ」とも呼ばれます。人の体には約100種類およそ100兆個の細菌が小腸や大腸に住んでいます。赤ちゃんはお腹の中にいるときは、まだ腸内細菌を持っていません。腸内細菌が赤ちゃんに宿るのは出産で産道を通るときや生まれてからです。母乳またはお母さんと直接触れあうことで菌がうつります。だからお母さんの腸内細菌が少ないと、赤ちゃんも腸内細菌に触れる機会が少なくなってしまうのです。
皆さんも「腸内環境」という言葉を耳にされたことがあるでしょう。腸内細菌は私たちの健康に深い関わりをもつことが、少しずつわかり始めています。その影響は免疫や代謝だけでなく、脳の発達や行動にまで及ぶと報告されています。妊娠中に腸内細菌を投与しておくと赤ちゃんのアレルギー予防につながるという報告もあり、腸内細菌は赤ちゃんの健康には欠かせないものなのです。
【腸内細菌を増やすには】
では腸内細菌を増やすにはどうしたらよいのでしょう。腸内細菌には善玉菌と悪玉菌、そしてそのどちらでもない中間菌の3種類があります。「健康的な腸」とは、悪玉菌よりも善玉菌のほうが多い状態です。善玉菌は悪玉菌を抑えて腸の運動を活発にし、感染の予防や免疫力を高め、また腸内でビタミンを作りだします。
善玉菌を増やす食品はヨーグルトや味噌などの発酵食品です。またオリゴ糖や食物繊維は善玉菌の増殖を助ける働きがあります。これらの栄養を多く含むバナナやゴボウ、大豆、ニンニク、玉ねぎなどを毎日意識して食事に取り入れましょう
また悪玉菌はストレスや便秘が原因で増加するので、軽い運動を取り入れるなどしてメリハリのある生活を送りましょう。腸内環境を整えることは、妊娠中からできるお腹の赤ちゃんへの素敵なプレゼントです。バランスよい食生活と規則正しい生活習慣で、お腹の中から健康を目指しましょう。
ご紹介した論文
Tochitani S, Ikeno T, Ito T, Sakurai A, Yamauchi T, Matsuzaki H. PLoS One. 2016 Jan 20;11(1)
参考サイト
e-ヘルスネットhttp://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html
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