最新医学と連携!産育食ラボVol.1「葉酸のなぜ?どう摂ればいい?」

最新医学と連携!産育食ラボ

妊娠~授乳期に「葉酸」が必要だとよく耳にするけれど。足りないとどうなるの?どんな食べ物に含まれているの?上手に摂るコツは?そんな疑問を一挙解決

山下敦子博士(医学)

「月とみのり」専属サイエンスアドバイザー
山下敦子博士(医学)

遺伝子工学などバイオテクノロジーの知見を背景に、医薬研究の道へ。
製薬会社研究員を経て大阪大学医学部研究員。現在は一女の母。はじめての子育てに奮闘中。

ビタミン13種のうち、日本人女性に不足しがちなビタミンが8種も?

  • なぜ葉酸が妊娠中に必要なのですか?
  • 葉酸は細胞分裂に関わるため、おなかの赤ちゃんの発育に欠かせません。
    また、妊娠期は、母体でも普段より多くの細胞分裂が行われているため、おかあさん自身にとっても必要ですよ。
  • 赤ちゃん、おかあさんともに必要なんですね
  • さらに、神経管閉鎖障害という先天異常のリスクを低減させるためには、葉酸の摂取が重要とされています。
  • 妊娠中のどの時期に葉酸が必要なんですか?
  • 神経管閉鎖障害のリスクを減らすという点では、妊娠1カ月以上前から妊娠3カ月までの間、葉酸の積極的な摂取がすすめられています。*1
    神経管閉鎖障害が発症するといわれているのは妊娠7週未満というごく初期の段階ですので、妊娠に気づく前から意識して摂ることが望ましいのです。しかし、妊娠が判明してからの葉酸の摂取でも効果がみられたとする報告もあり、妊娠が分かったらその日からすぐにでも意識してほしいですね。
  • 妊娠に気づく前から・・・。
    妊娠を望む女性は普段の食生活から葉酸を意識すべきなんですね。
  • 葉酸が必要なのは、初期だけではないんですよ。
    妊娠中に葉酸が不足すると、血管障害など赤ちゃんの発育に影響することが知られています。
    おかあさんの貧血予防にも葉酸は有効です。
    さらに、妊娠後期での葉酸摂取量が多いと早産や低出生体重のリスクが低くなる可能性も指摘されています。
  • 貧血予防にも関係あるんですか?
    では妊娠前から妊娠中ずーっと重要な栄養だということですね。
  • その通りです。同じく授乳期にも大事なんですよ。
    日々大きくなる赤ちゃんは葉酸を必要としているので、母乳育児のおかあさんはしっかりと摂っておきたいですね。

両手いっぱいの野菜を毎日、が目安。ちょっとした工夫で葉酸リッチな毎日に。

  • 葉酸はどんな食べ物に含まれていますか?
  • ブロッコリー、ほうれん草、グリーンアスパラガス、枝豆などの野菜や、いちご、アボカド、マンゴーなどの果物に多く含まれます。
    鶏や牛のレバーにも豊富ですが、レバーはビタミンAの過剰摂取のおそれもあるので食べる量には要注意です。
  • 毎日の食事ではどんな工夫をすればいいのでしょう?
  • 妊娠中の葉酸の推定平均必要量は400μg/日、推奨量は480μg/日です。
    1日に食べておきたい野菜の量は350g(うち緑黄色野菜120g)。
    生の状態でおよそ両手1杯にのる量が目安です。これだけの野菜を含むバランスのよい食事をすれば、1日400μgの葉酸摂取が可能とされています。
  • 両手1杯の野菜・・・かなりの量ですね!
  • そうですね。平成24年の厚労省の調査*2を見ると、1日の野菜の平均摂取量は20~29歳女性で243.7g(緑黄色野菜70.3g)、30~39歳女性で250.6g(緑黄色野菜79.8g)です。葉酸は野菜だけに含まれるわけではありませんが、野菜の量だけを見るとちょっと足りてませんね。
  • 調理の注意点などはありますか?
  • 葉酸は熱に弱く、水に溶けやすい性質があります。緑黄色野菜はサッと加熱することや、溶け出た煮汁も一緒に食べるスープや煮込み料理を取り入れるといいですね。
    加熱せずに食べられるいちごやアボカドはおすすめです。
    それから、そのまま食べられるといえば、納豆も葉酸が豊富なんですよ。
  • 納豆にも!意外です。ほかにも手軽に摂れるものはありますか?
  • 量は食べられませんが、ごま、きな粉、くるみにも葉酸は多く含まれています。
    和え物に使ったり、くるみは少量をおやつがわりにするのもいいですね。
  • 葉酸と一緒に食べるといい食べ物はありますか?
  • 葉酸が働くには、様々な栄養素の助けが必要なんです。
    主なものは、ビタミンB12、ビタミンB2、ビタミンB6です。
    ビタミンB12はあさり、煮干し、さばなどに、ビタミンB2は納豆、卵、いわしなどに多く含まれます。ビタミンB6は鶏むね肉、まぐろ、かつおなどに豊富です。
    上手に食品を組み合わせた献立のアイデアは「産育食レシピ」のページも参考にしてくださいね。

葉酸サプリは主治医の先生とよく相談して、過剰摂取には要注意。

  • 葉酸サプリメントもよく目にしますが、わざわざ摂る必要はないのでしょうか?
  • 葉酸の摂取は、基本的には十分な野菜を含むバランスのよい食事からがベストです。
    ただし、最近では、神経管閉鎖障害のリスク低減の目的で、通常の食品からの葉酸の摂取に加えて、サプリメントなどの栄養補助食品からの葉酸の摂取(400μg/日)*3がすすめられています。
  • それはなぜですか?
  • サプリメントに含まれる葉酸は食品中の葉酸と構造が異なっていて、体内での吸収がいいんです。さらに、神経管閉鎖障害のリスク低減に関する研究結果の多くはサプリメントの葉酸によるもので、食品中の葉酸についての科学的根拠は十分でないとされています。
    また、神経管閉鎖障害のリスク低減が必要な期間は、つわりの時期とも重なります。
    食べたくても食べることができない場合もあるので、サプリメントからの葉酸の摂取は有効と思われます。
  • サプリメントで葉酸を摂取する場合の注意点はありますか?
  • 通常の食事では葉酸の過剰摂取の心配はないのですが、サプリは注意が必要です。
    サプリメントからの葉酸摂取量は1日当たり、18~29歳女性では0.9mg(900μg)*4、30~49歳女性では1mg(1000μg)*4を超えないようにとされています。
    製品の表示や注意事項をよく読み、主治医の先生と相談のうえ利用されることをおすすめします。
  • 妊娠中はとにかくブロッコリーをモリモリ食べればいいのだと思ってましたが…(笑)
    野菜だけでなく、魚介類、豆や肉など、結局いろんな食品を取り入れることが大事なんですね。
  • はい、バランスのよい食事が基本ですよ。
    最後に一つ。近年の研究から、葉酸は遺伝子の働き方をコントロールする作用を持つこともわかってきました。
    この作用はDOHaD説と密接な関係があるんです。
    葉酸は体内に摂りだめができないため、毎日摂取することが必要です。
    緑黄色野菜を特に意識しながら、バランスの整った産育食を日々心がけましょう。

さらに詳しい資料を見る

  • *1:神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性に対する葉酸の摂取に関する情報提供の推進について
    (厚生労働省 www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3a3-03c.pdf
  • *2:平成24年「国民健康・栄養調査」の結果(厚生労働省 平成25年12月19日)
  • *3:400μg/日は、サプリメントなどに含まれるプテロイルモノグルタミン酸(モノグルタミン酸型の葉酸)の量で設定されています。
  • *4:1日あたりの耐容上限量の0.9mg(900μg)及び1mg(1000μg)の量は、サプリメントなどに含まれるプテロイルモノグルタミン酸(モノグルタミン酸型の葉酸)の量で設定されています。

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