Vol. 23 むくみから読み取る体調のサイン、あなたは大丈夫?

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妊娠中に多くの人が体験するというむくみ。見た目も気になるし、足が張って寝られないということもあるかもしれません。むくみは赤ちゃんにどう影響するの?予防できるの?いろいろ気になる妊娠・授乳期のむくみについて詳しくお話しします。

山下敦子博士(医学)

「月とみのり」専属サイエンスアドバイザー
山下敦子博士(医学)

遺伝子工学などバイオテクノロジーの知見を背景に、医薬研究の道へ。
製薬会社研究員を経て大阪大学医学部研究員。現在は一女の母。はじめての子育てに奮闘中。

妊娠中のむくみ、とくに注意すべき症状とは?

  • 妊娠中ってむくみやすいものなんですか?
  • そうですね、だいたい3割くらいの人が妊娠中にむくみを体験するようです。普段あまりむくまないタイプなのに、妊娠中に初めてむくみを体験したという方もいますよ。
  • どうして妊娠中にはむくみやすくなるんですか?
  • むくみというのは組織中に余分な水分がたまっている状態です。通常、動脈から組織へと流れこんだ血液は静脈とリンパ管から回収されますが、流れ込む血液量が多くなったり、回収する静脈やリンパ管にトラブルがあると組織中に水分がたまってしまい、むくみとなります。妊娠中は血液量や水分量が増えることに加えて、ホルモンの影響もあって組織中に水分がたまりやすくなっています。また、子宮が大きくなると血管の一部を圧迫して血流が低下することがあり、むくみやすくなるのです。
  • 妊娠中のむくみは赤ちゃんにも何か影響があるのでしょうか?
  • 症状がむくみだけならば、赤ちゃんへの影響はないと考えられています。これまでの研究からは、妊娠中におかあさんがむくみを体験した場合には、赤ちゃんが低出生体重児となる頻度が低い、胎児の死亡率が低いなどの結果が得られており、むしろ予後はよいとされています。
  • むくみは悪いイメージがあったのですが、違うんですね。
  • そうですね。以前まで、むくみは妊娠中のトラブルの前兆のように考えられていたのですが、症状がむくみだけならば病的な意義は低く、妊娠中の生理的な現象であるという見方に変わってきています。ただし注意が必要なむくみもありますよ。
  • それはどんなむくみですか?
  • 例えば、妊娠高血圧症候群という病気になるとむくみを生じることがあります。この場合には医師の指示に従って治療を受けなければなりません。それから、妊娠28週未満のむくみにも注意が必要です。通常、妊娠における生理的なむくみというは妊娠35週以降に生じることがほとんどです。妊娠28週未満のむくみは、妊娠高血圧症候群との関連が強いと言われていますので早めに受診することをおすすめします。また、それ以外の時期でもむくみが急にひどくなった場合、むくみに左右差がある場合には医療機関を受診しましょう。
  • むくみやすい場所というのはあるんですか?
  • あくまで目安ですが、妊娠による生理的なむくみは下半身や手の甲に出やすいようです。一方、妊娠高血圧症候群に伴うむくみは顔やまぶたをはじめ、全身的に出やすいと言われています。ただし、すべての例に当てはまるわけではありませんので、いつもよりむくみが気になる場合には医師に相談しましょう。
  • むくみは出産後にも多いのですか?
  • 産後は妊娠中のように生理的にむくみやすいという時期ではありません。出産後すぐはホルモンの影響が残ることもあるので、むくみが治らないという人もいるかもしれません。個人差はありますが次第に解消されていきます。ただし、別の理由でむくみやすくなることはあります。
  • 例えばどんな理由ですか?
  • むくみは血流の影響を受けやすいとお話ししました。授乳中は同じ姿勢を続ける時間が長くなりますし、運動不足になりがちです。こうしたことから血流が悪くなってむくみやすい、ということはあります。また、寝不足やストレスもむくみの原因となることがあるので気をつけましょう。これらの原因を解消してもむくみが改善しない、あるいは急なむくみの悪化、左右差のあるむくみについては他の疾患が原因である可能性がありますので、医療機関の受診をおすすめします。

むくみが気になったら、まず血流をよくする軽い運動やストレッチを

  • むくみが気になる時には水分や塩分は控えた方がいいのですか?
  • 一般的な食事に含まれる程度であれば、無理に控える必要はありません。妊娠中はもともとからだの水分を増やそうとしている時期なので、水分の摂取量を減らすと循環血液量が減り、子宮や胎盤への血流量も減ってしまうと考えられています。塩分についても極端に減らすと体内のナトリウム濃度が低下して、こちらも子宮や胎盤の血流量に影響するためおすすめできません。以前は厳しく制限されていることもありましたが、妊娠中に無理に水分や塩分を控えると逆に悪影響となることがわかってきています。
  • では、むくみを改善するにはどんな方法がいいのですか?
  • 症状がむくみだけの場合には、軽い運動やストレッチ、マッサージなどが効果的です。組織中にたまった水分を排出するためには筋肉の動きで静脈やリンパ管の流れをよくすることが大切です。下半身のむくみについては、寝るときにクッションなどを使って足を高くしておくこともおすすめです。
  • むくみの予防としてできることは何かありますか?
  • 妊娠中のむくみはホルモンの影響もありますので、完全に予防することは難しいと思います。でも、できるだけ症状を軽くするためにできることとしては、筋肉を動かして血流を良くすることになります。

重いむくみをもたらす、妊娠高血圧症候群ってどんな病気?

  • 妊娠による生理的現象としてのむくみは、ちょっとした工夫でケアできるんですね。でも、そのむくみが妊娠高血圧症候群によるものだとしたら心配です。そもそも妊娠高血圧症候群って、どういう病気なんですか?
  • 妊娠高血圧症候群は、妊娠20週から産後12週までに血圧が高くなる症状で、おかあさんにとっては痙攣、脳出血などのリスクが高くなりますし、赤ちゃんにとっても発育不良や胎盤剥離などのリスクが高くなる病気です。(参照:日本産科婦人科学会「妊娠高血圧症候群」
  • 何が原因で血圧が高くなるんですか?
  • 詳しいメカニズムは完全に解明されていませんが、胎盤の血管がうまく作られないことが原因の1つではないかと考えられています。
  • 妊娠高血圧症候群を予防する方法はあるのですか?
  • 原因が明らかではないので、予防方法についても参考情報ということになりますが、食べ過ぎに気を付けて薄味を心がけることが大切です。
  • 食べる量については以前にもお話がありましたね(Vol.21 知りたい!食欲と体重をうまくコントロールするコツ
  • そうですね。肥満はどうしてもいろいろなトラブルの原因になりやすく、妊娠高血圧症候群についても肥満が原因の1つと考えられています。ですから、食べる量はもちろんですが、高カロリー食を控える、夜食を控えるなどして体重が増え過ぎないように気を付けて欲しいと思います。

妊娠高血圧症候群を避ける、賢い食事法

  • 塩分も気を付けた方がいいんですか
  • もともと日本人は塩分をやや多めに摂りがちですから、妊娠前よりは塩分を抑えることをおすすめします。ただし、極端に減らすことはやめてください。塩分には良くないイメージがあるかもしれませんが、塩に含まれるナトリウムも妊娠中は必要な栄養素です。
  • 塩分を控えるコツを教えてください
  • 味付けに香辛料やレモン、お酢などを加えると塩分を減らすことができます。また、こんぶやかつお節のだし、野菜のだしなどを使うとうま味成分が増え、塩分が少なくてもおいしく感じることができます。
  • 他に何かおすすめの栄養素はないですか?
  • 例えば、カリウムは血圧を下げる効果が期待できますし、n-3系不飽和脂肪酸は血流改善が期待できるので、おすすめできます。それから、カルシウム不足と高血圧に伴うトラブルの関係が示唆されています。妊娠中は普段通りに食事をしていればカルシウム不足にはなりませんが、普段から不足気味の場合には気を付けてください(Vol. 9 足りていますか?母子の健康維持に欠かせないカルシウム)。
  • カリウムを上手に摂る方法は何かありますか?
  • カリウムを多く含む食品としては海藻類、豆類が挙げられます。でも野菜や果物にも含まれていますので、比較的摂りやすい栄養素です。ただし、煮たりゆでたりすると食品の外に流出してしまうので、生で食べられるものは生で食べ、加熱をする場合には短時間にするかスープのように煮汁も摂れるものにするといいでしょう。
  • n-3系不飽和脂肪酸というのはどうやって摂ったらいいのですか?
  • 脂質の回でお話ししたように、EPAやDHAなど魚に多く含まれている脂肪酸です。シソ油、エゴマ油、アマニ油などの植物性の油にも含まれていますが、酸化しやすく吸収率もよくないので、できるだけ魚から摂ることをおすすめします(Vol.11 妊娠・授乳中に、脂質と上手につきあうために )。
  • 他に気を付けることはありますか?
  • むくみ対策としてさまざまなサプリメントがありますが、含まれている成分によっては妊娠中の安全性が確認されていないものもありますので慎重になってください。できるだけ食品から必要な栄養素を摂るようにしましょう。

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