最新医学と連携!産育食ラボVol. 18 みんなのお悩み・便秘を撃退!妊娠中も腸内美人でいるために

最新医学と連携!産育食ラボ

排泄は食事と同じくらい大切な生活習慣です。おかあさんの腸内環境は生まれてくる赤ちゃんの健康にも影響することがわかってきています。排便の仕組みや便秘の原因を知って妊娠・授乳中の便秘をできるだけ予防しましょう。

山下敦子博士(医学)

「月とみのり」専属サイエンスアドバイザー
山下敦子博士(医学)

遺伝子工学などバイオテクノロジーの知見を背景に、医薬研究の道へ。
製薬会社研究員を経て大阪大学医学部研究員。現在は一女の母。はじめての子育てに奮闘中。

「便秘」判定には個人差あり!まずは便秘の正体と、その原因を知ろう。

  • 便秘というと何日も便が出ないことかと思っていますが、どれくらい出ないと便秘なんですか?
  • 実は便秘の定義というのはきちんと決まっているわけではありません。適度な硬さの便がスッキリ出ていれば数日に1回でも便秘とはいいません。逆に毎日排便があってもコロコロと硬い便であったり、残便感がある場合には便秘といえることもあります。一般的には3日以上排便がない場合には便秘の可能性を考えます。
  • そうなんですか!便は毎日出るのが健康なのだと思っていました。
  • 食べ物の消化・吸収の速度に個人差があるため、排便の頻度は人それぞれになります。もちろん、同じ人でも排便の頻度は日によって変わりますよ。
  • 便秘の原因は何ですか?
  • 便秘の原因はほとんどが生活習慣に関するものです。例えば、食事量、食事内容、生活時間、それにストレスも原因になりますよ。でも場合によっては腸に疾患があったり、服用している薬のせいであることもあります。便通の不快感が続く場合には自己判断せずに医療機関を受診してくださいね。
  • 食事の影響は大きいのですか?
  • そもそも便は食べた物の残りかすや体内で不要になった細胞などが成分になっています。食べる量は便の量に影響します。便の量が少ないと大腸への刺激が不足して便秘になりやすくなります。また、胃に食物が入ることが刺激となって大腸の運動が起こり、便意が催されます。食べることと排便には強い関係がありますよ。
  • ストレスはどうして便秘の原因になるんですか?
  • 大腸内を便が移動し、排便されるまでにはいろいろなところが伸びたり縮んだりしなくてはなりません。こうした複雑な動きを支配しているのは交感神経や副交感神経といった自律神経です。特に排便時には副交感神経の働きが重要です。ストレスが溜まっている状態では交感神経の働きが強くなっているために排便がうまくいかず、便秘になりやすいと考えられています。

便秘になりやすい妊娠期!でも母体の腸内環境って、とっても大事なんです。

  • 妊娠中は便秘になりやすいと聞いたのですが、本当ですか?
  • はい、本当です。妊婦さんの3-4割くらいの方が便秘を経験されるという調査結果があります。
  • どうして便秘になりやすいのですか?
  • 妊娠期に特有の便秘の原因は2つあります。一つは妊娠初期に分泌が高まるプロゲステロンというホルモンの影響です。プロゲステロンは大腸の動きを抑える働きがあるので、便の移動が遅くなります。すると便の水分がいつもより多く吸収されてしまい、便が固くなり排便しにくくなるので便秘になりやすいのです。もう一つは、大きくなってくる子宮の影響です。子宮が大きくなると近くにある大腸を圧迫するため、大腸の動きが抑えられ便秘になりやすくなるのです。
  • ホルモンや子宮が原因では我慢するしかないのでしょうか?
  • 便が出にくいというのは不快感がありますが、妊娠中の便秘は病気ではありませんので、あまり深く思い悩まないようにしてくださいね。ホルモンや子宮以外にも、他のことが原因で便秘になりやすくなっている場合もあります。
    たとえば妊娠中にはつわりや嘔吐もよくあります。つわりによる食事量の減少や、嘔吐による水分の減少は便秘の原因になりやすいですよ。また、仕事や家事のストレスも便秘の原因になります。
  • 便秘になりやすい理由がこんなにあるんですね。
  • そうなんです。とはいえ、やっぱり妊娠中のおかあさんには、できるだけ便秘の状態を改善して、おなかをすこやかに保ってほしいと思います。便秘が続くと腸内環境の状態が悪くなりやすいのです。おかあさんの腸内環境は、赤ちゃんの脳の発達や免疫にも影響するかもしれない、という研究もあります(【産育食ラボ速報】妊婦さんが腸内細菌不足だと、子どもの脳の発達に悪影響!?)。

腸のリズムを利用した生活習慣で、薬に頼らず便秘スッキリ。

    • では、妊娠中でも便秘を予防できるような方法はありますか?
    • もちろんありますよ。まずは生活リズムを見直してください。腸の動きには概日リズムがあります。夜眠っている間は休み、朝目が覚めると動き出します。このリズムに合わせて朝食を摂ると胃から腸への反射が起こり大腸の運動がより大きくなって自然な便意を催しやすくなります。胃から腸への反射は食べる量に応じて大きくなること、空腹時間が長いほど大きくなることがわかっていますので、夜食を摂らず、朝食をしっかり摂ることがおすすめです。

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  • なるほど。腸のリズムを利用するんですね。
  • その通りです。それから、腸の動きはからだを動かすことによっても活性化されます。仕事や育児で同じ姿勢を続けていると腸の動きが悪くなり便秘になりやすくなりますよ。仕事や育児の合間に少しずつでもからだを動かしたり、軽い運動をするといいですよ。
  • どうしても、というときは便秘薬を使っても大丈夫ですか?
  • 便秘薬の中には子宮の収縮を誘発する成分が含まれているものがありますので注意が必要ですよ。妊娠中でも使える便秘薬はありますが、自己判断せず必ず主治医に相談してください。
  • 市販のサプリメントなどは大丈夫ですか?
  • 市販のサプリメントやハーブティーなどには自然なお通じを助ける、といった商品もたくさんあります。しかし、これらの商品は妊婦さんへの安全性がきちんと確認されていないものもありますので、使用には慎重になってください。薬もサプリメントも少しずつ使用量を減らし、生活習慣を改善することによって自然な排便リズムをつかむようにしてくださいね。

「状態のいいうんち」を作る上で、重要なのが食物繊維。

    • 食べ物でも便秘の予防はできますよね?
    • もちろんです。まず、食物繊維がお通じによいことはよく聞かれるのではないかと思います。先ほどお話しした生活習慣が腸の動きを良くするのに対して、食物繊維の場合は便の状態を良くすることができるといえます。
    • 「便の状態を良くする」ってどういうことでしょう?
    • ポイントは便の量と水分です。食物繊維というのは胃や小腸では消化・吸収することができないので大腸まで残りやすく、便の量を増やすことができます。また食物繊維は水分を保持しやすいので便が硬くなるのを防ぐことができます。便の量が増えると腸を刺激して便意を催しやすくなりますし、便の水分が十分にあると腸内の動きも良くなります。したがって、食物繊維をしっかり食べていると便秘になりにくいのです。
    • 食物繊維を上手に摂るコツはありますか?
    • 食物繊維というと野菜、というイメージがあるかもしれません。でも、野菜よりも豆類、きのこ類や海藻類の方が食物繊維が豊富に含まれています。これらの食品を副菜にするのがおすすめです。また、押し麦やオールブランなどの穀類にも食物繊維が豊富に含まれていますので、主食に加えてもいいですね。

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  • 食物繊維は食べにくいというイメージがあるのですが、つわりので食欲のないときはどうやって食べたらいいでしょうか?
  • つわりの時は食べやすいゼリーやスープとして食物繊維をとるのがおすすめです。寒天や果物には水溶性の食物繊維が多く含まれていますので、フルーツゼリーにすると食べやすくなります。また、水溶性食物繊維以外でも、加熱してミキサーにかけたスープなどは食べやすくておすすめです。

腸内環境は人によって千差万別。自分に相性のいい乳酸菌、見つけてみよう。

  • ところで、乳酸菌もお腹の調子を整えると聞きますが、便秘にもいいんですか?
  • 乳酸菌は腸内細菌の一種で、食物繊維を分解して乳酸などの有機酸を産生します。この有機酸が腸内の病原菌を抑えたり、腸内環境を整えてくれるので、便秘や下痢が改善されるんです。
  • 乳酸菌といえば、ヨーグルトですか?他に何かありますか?
  • たとえば、ぬか漬けや浅漬け、キムチ、ザワークラウト、ピクルスなどにも多く含まれています。ヨーグルトなどの乳製品は手軽にいろいろな種類の乳酸菌が試せるのが便利といえそうです。近ごろでは、いろんな名称の乳酸菌を売りにしたヨーグルトが市販されていますが、腸内環境は個人差がありますので、乳酸菌との相性も人それぞれになります。いろいろな乳酸菌を試して自分の体調に合うものを選んでみてください。もちろん、味で決めても構いませんよ。
  • 食物繊維や乳酸菌以外にも便秘によい食べ物はありますか?
  • 脂質や香辛料、炭酸飲料などは腸を刺激して便通を良くすることがあります。効果については個人差がありますので、少しずつ試してみてください。摂り過ぎると下痢を引き起こすことがあるので注意してください。
  • 他に気を付けることはありますか?
  • 食物繊維は過剰に食べ過ぎると下痢を起こしたり、ミネラル類の吸収を阻害することがありますので、まとめて食べるのはやめましょう。便秘の予防には食材だけでなく、生活習慣も併せて見直してくださいね。

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